妻がいなくなって初めて気づいたこと

いつもと同じひとり晩ごはん

やっと家についた。「疲れた」口から自然と漏れた言葉だ。

ふと考えると、家の前まで帰ってきた時に、毎日同じ言葉を言っている気がした。

会社を立ち上げてから5年、家に着くのはいつもこの時間だ。

冷蔵庫から缶ビールを取り出し、リビングにあるお気に入りイタリア製の白い3人掛けソファーに座り、一気に半分飲み干しながらテレビのスイッチを入れる。芸人同士がなにか喋っているが、興味もないのにぼーっと3分ほど見ている。

机の上には、ラップをかけたおかずが1皿置いてある。そのお皿をレンジで温めている間に、2本目の缶ビールを取りに行いきレンジの前で待った。「チン」と感情のない音が聞こえ、お皿を取りだし机に置いた。

この「チン」という感情のない音が、0時過ぎにひとりで食べる晩御飯を、より虚しいものにしていると感じながらおかずに箸をつけた。

夫婦とは何か?家族と夫婦は違います。

いつもと同じ朝

朝ごはんだけは、家族一緒に食べる大切な習慣が我が家にはある。これは、結婚した時に妻が決めたルールだ。忙しい時も、喧嘩をしたときも、朝ごはんは家族一緒に食べよね。というのが妻の思いだった。

「パパおはよう」と元気で気持ちがいい挨拶を、娘の双葉がしてくれる。「おはよう双葉。幼稚園は楽しい?」「うん」と頭を縦にふる。毎朝同じような会話をしているが、私には、このときだけが仕事のことを忘れて幸せを感じる心地よいひとときだ。

淹れたてのコーヒーとビタミン剤5錠とコップ一杯のミネラルウォーターが、台所の対面カウンターに妻が用意してくれている。それを立ちながら飲んでから席に着く。

朝食のときの席は決まっている。私の右横に7歳の双葉が座り、妻のさくらが双葉の前に座る。私の目の前はいつも空き席である。

3人が手を合わして「いただきます」と合唱し朝ごはんが始まる。これもさくらが決めたルールだ。朝ごはんの間は、双葉とさくらが幼稚園の話をしている。その話を聞きながら、私は無言でご飯を食べ続ける。

7時00分になると、「行ってきます!」と双葉の元気な声が聞こえる。バタバタしてさくらと双葉が出ていく。さくらは双葉を幼稚園に送ってから、その足で会社に行く。

私は、2杯目のコーヒーを注ぎ新聞に一通り目を通してから家を出る。気分が重たい。あれもこれも気になることが頭を過る。満員電車に揺られながら今日の仕事の段取りを考える。50分ほどで会社がある駅に着き、そこから徒歩3分で着く小さなオフィスの鍵を開ける。

私の会社は、9時30分始まりなのでいつも私が一番に着く。というか1番について、出社するスタッフを迎えるのが創業以来の私のポリシーだ。

夫婦の仲にも礼儀あり夫婦間の大切なマナー

いつもと違う夜

「今日も疲れたぁ」いつものように声が漏れる。しかし、いつもとは違う疲れだ。半年前から準備を進めていた大きな案件が、今日契約になったからだ。

ズボンの後ろポケットから、スマートフォンを取り出し時間を見ると23時13分。いつもより少し早く家についた。

鍵を開け、リビングの電気をつける。冷蔵庫を開け缶ビールを2本取り出し、お気に入りのソファーにへたり込む。「疲れたぁ」いつもの心の声が勝手に口から出た。

ビールで喉を潤し一息着いた時に、私は何か違和感を感じた。

いつもの場所に、ラップに覆われたおかずのお皿がない。そのかわりに裏返しになったA3サイズの白い紙が置いてあった。

帰ってきた時に感じた違和感の理由はコレだと今わかった。

私は、2本目のビールに口を付けたまま、目の前に置いてあるA3の紙に手をやりゆっくりと表に返した。

夫婦関係を後悔した夫の話

今までと違う朝

「おはよう」と、台所で朝ごはんの準備をしているさくらに挨拶をすると、さくらも手を止めて、私を見て笑顔で「おはよう」と返した。次にさくらの横で手伝いをしている双葉が「パパおはよう」と。「双葉ありがとうね。ママのお手伝い。ママが双葉が手伝ってくれて助かってるっていつも言ってるよ」と伝えると、双葉が恥ずかしそうな笑顔を返してきた。

「いただきます」と、3人の元気な合唱が今は心地よく感じる。これが日常の小さな幸せなのだろうと思った。この毎日の小さな幸せを、今は感じる事ができる。

家族で一緒に食べる毎日の朝食が、これだけ幸せな時間なんだと、なぜ今まで気づかなかったのだろうか?私は、立ち上げた会社を頑張って成功させ、収入を上げて、少しでも経済的に家族にゆとりをもたせてあげたいと、仕事中心の人生を送っていた。

今は、何が人生でいちばん大切なのかを知っている。さくらの笑顔だ。妻との時間だ。そしてさくらと私で創っていく双葉の未来だ。

「遅れるよ、一郎も双葉も早くしてね」

お気に入りの赤いランドセルを背負った双葉と、カバンを持った私が同時に玄関に。「行ってらっしゃい。気をつけてね」さくらと私が双葉に手を振る。双葉は振り向きながら手を降って友達と合流し、楽しそうに話をしながら学校へ向かっていった。

「一郎は帰り何時ごろになるの?」

「19時ぐらいかな。晩御飯は俺が準備しとくね」

「ありがとう助かるわ。私は赤ワイン買って帰るね」と言い終わると、さくらが私の頬にキスをした。

「今日も頑張って」と言い、私はさくらのお尻を叩いた。

今、夫として思うこと

机の上に「離婚届」が置いてあったあの夜から1年。

あの時は、

妻はどんだけ悩み苦しんでいたのか?

夫婦とは何か?人生って何なのか?

仕事ってなんなのか?

俺は何をしているのか?

など多くのことが頭によぎって動揺もした。

「一郎話があるんだけど」と何度か、さくらから言われた記憶がある。しかしその頃の私は、仕事でヘトヘトで、頭の中も仕事でいっぱいだったので、ゆっくりと話しをする機会を持たなかった。何度かではなく、いままで結構な回数をさくらから言われていたのだ。

あの頃は、私は家族のために一生懸命働いていた。と自負していた。

双葉が産まれたばかりなのに会社を辞め独立した。妻のさくらは「一郎はやりたいことして、応援するよ、私も働いているし大丈夫だよ」「一郎だったらきっとうまくいくよ」とありがたい言葉をくれた。だからこそ会社を成功させないと夢中だった。それが、妻のため家族のためになるとしか思っていなかった。

でも、「家庭をかえりみないでいい」「夫婦の会話も無くていい」「毎晩明け方まで働いていい」「家族の時間も無くていい」「赤ちゃんも私がひとりで育てるから大丈夫」とはさくらは言っていなかった。

私の自己中心的な理解だった。仕事さえ頑張っていればと、家族のために遅くまで働いていると曲がった納得感で。

仕事中心で、家族や夫婦の時間を削っていても気にならない夫が、世の中に多い。もちろん仕事は大切です。経済的にも自己成長をするためにも。

しかし、人生でいちばん大切なのはという質問を投げかけられたら、はっきりと答えることが今はできます。

「一番大切なのは、妻です。」と。もちろん子供は大切ですが、成長していずれ自分の人生を歩み始めますよね。

人生100年時代は夫婦で楽しむ時代です。

あなたも夫婦でゆっくりと向き合う時間を創ってはいかがでしょうか?

私みたいになる前に。私はまだ元に戻れたので本当にラッキーな夫だったが。

机の上に離婚届が置いてあったあの夜のことは今でも鮮明に心に残っている。

妻に何度も連絡をしたが、妻は「決断したから」と取り入ってもくれなかった。その態度は今まで私が妻にしていた態度なのだろう。

何度も何度も話し合う時間をくれるように頼んで、ようやく合うことができた。

ふたりで何度も話し合いをした。話し合いというより、私の反省といまだからわかる感情を伝えているだけだったと思うが。

いまでも、妻がひとりで悩んでいた日々のこと、そして決断して離婚届を置いた日のこと、子供を連れてカバンひとつで家を出ていったことを考えると、二度とそんな寂しい思いを妻にはさせないと決断しています。

人生とは何か?夫婦とは何か?の答えを見つけたから。

この「妻がいなくなって初めて気づいたこと」は、夫43歳 妻33歳 子供7歳のファミリーです。

夫は、妻がいなくなって初めて気づいたことは、「私は、家庭や妻を大切にしていた」思っていた。そのために「仕事を必死に頑張った」と。しかし、家庭や妻との大切な時間を犠牲していることを知った。

もう一つは、妻の大切さを。夫婦は夫と妻のふたりで成り立っていることを。人生で一番大切なものは、家族であり夫婦だと理解していたが、行動が全く伴っていなかったと感じました。

いろいろあったけど、それがなければ気づけなかったと今では思っているそうです。 夫は日常生活を大切にしているようです。

妻といる人生が幸せと言っていました。人生でいちばん大切なことを気づけて、その大切なことを中心に人生を創っていますと。夫婦仲が良くなってからは、仕事も長時間働くことも無くなった。しかも業績も良くなった言ってました。仕事が先か、家庭が先か?の課題も、家庭や夫婦関係が充実すれば仕事もうまくいくと言うことの立証にもなりますね。

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2020-06-19T15:59:54+09:00

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